ヴェネツィアに来たらブラーノ島、ムラーノ島にも足を伸ばす価値はあった話
2025.9.24
今日はヴェネツィア本島から水上バスに乗り、ブラーノ島とムラーノ島を観光する予定だ。ブラーノ島はカラフルな街並みとレース編みが有名で、ムラーノ島はガラスが有名な島である。朝から雨が降っており、散策には向かない天気だが、そんなことは言っていられない。
9時半頃にサンタ・ルチア駅に到着し、ブラーノ島とムラーノ島へ行く水上バス乗り場へ向かう。駅から乗り場まで少し距離があるのだが、徒歩で向かうことにする。中心街から離れているせいか、雨のせいか、観光客があまりいない。しばらく歩いて海に面した通りに出ると、急に風も強くなり、夫の傘が5秒に1回裏返っていた。
水上バスには、自動券売機で券を買うか、クレジットカードを直接読み取り機にタッチして乗れるようだ。ムラーノ島まで20分、ブラーノ島までは40分かかる。どちらから行っても良いが、先にブラーノ島の方へ行くことにする。


ブラーノ島の水上バス乗り場から降りると、家々の色鮮やかなことに驚く。さらにレース編みのお店の間を抜けて少し歩くと、運河の両脇にカラフルな家が建ち並ぶエリアが現れた。24色絵の具で塗ったような色合いだ。私を含め観光客はみな、雨にも負けず、風にも負けず、立ち止まって写真を撮っている。ヴェネツィア本島とはまた違った雰囲気の素敵な街並みだ。ヴェネツィアに来たら、ここまで足をのばす価値があるなと感じた。
街並みがカラフルなのは、ブラーノ島の漁師たちが、霧の中でも自分の家が分かるように色を塗ったかららしい。
気の向くままに散策し、昼ごはんをどこで食べようかという話になった。安めの店に入れたら嬉しいが、調べてみるとブラーノ島の店はどこも高い。諦めて、結局適当に選んだ店に入店した。店先にメニュー表が出ていて、もちろん高いが、ほかの店に比べてとりわけ高いということはなかったからだ。

入店すると、店員さんがちょっとイタリア語訛りの英語で接客してくれ、片言でなんとか意志を伝えながら注文する。アーリオオーリオのパスタと、鯛のグリルを注文すると、店員が「これは冷凍の魚だけど、今朝取れたばかりの新鮮なものを用意できるよ!」と伝えてくる。それは食べてみたいと思い、オーダーすることにする。この時私は、鯛のかわりに新鮮な魚介の料理が来るのだと思っていたが、どうやら両方オーダーしたことになっていたようだった。今朝採れたという小さなイカのフリットが出てきて、次に出てきたパスタも食べ終えようかというころ、大きな鯛が運ばれてきたのである。私たちは「ん?うちじゃないよ?」みたいなジェスチャーをしたが、店員さんは鯛を切り分け始めた。そしてシェアするための取り皿まで置いてくれて、美しく切り分けられた鯛を置いて去っていった。私たちは大人しく鯛を食べることにした。

味の方はどれもちゃんと美味しかった。どれぐらい美味しいかというと、日本で店を出してもやっていけるレベルの美味しさだ。仕方なく食べた鯛も身がふっくら柔らかく、味つけも魚本来の旨味を引き出す味付けでなかなか美味しい。つけあわせのしゃがいも、ミニトマト、オリーブも調理が上手いなと感じた。結果的には鯛を食べられて良かったかもしれない。店員さんに営業されて注文したイカのフリットも、日本の居酒屋で出せるレベルの丁度いい塩加減だったし、パスタもオリーブオイルとニンニクがしっかり効いていて美味しかった。二人で合計93ユーロのレシートを前にしても、不思議と心は穏やかだった。
レストランを出ると、先程の雨がやんで青空が見え始めていた。ブラーノ島のカラフルな街並みは、やはり太陽光があるほうが綺麗に見える。
晴れ空の下のブラーノ島を写真に収めつつ、次のムラーノ島へ向かうべく水上バス乗り場に向かった。


ムラーノ島は、ブラーノ島のような派手な美しさはないが、こちらも素敵な街だった。ヴェネツィア本島と同じでクリーム色、ベージュ、オレンジ、赤を基調とする色合いの街並みであり、ヴェネツィア本島と違って裏路地が少なく開放的で、ヨーロッパのおしゃれな港町、といった雰囲気である。ムラーノガラスが有名で、運河に沿って並ぶお店のほとんどがガラス製品を扱うお店だ。カラフルに色付けされたガラス製の花瓶やグラス、食器、照明類が売られている。シャンデリアは本当に見事なものだ。天気も晴れが続いており、散策していると少々暑いが、その分綺麗に写真が撮れる。

街並みを散策したあとは、Wave Murano Glassというガラス工房に立ち寄った。ここでは、実際にガラスを作る様子を見ることができる。課金をすれば、体験もできるらしい。工房では、男女合わせて10人ぐらいの職人たちが忙しそうに仕事をしていた。長い棒の先に熱して柔らかくなった丸いガラスの塊がくっついていて、それを炉の中に入れたり、取り出してくるくる回したり、型に入れて整形したりしている。ガラスが少しずつ完成に近づいていくのは見ていて飽きない。

街並みと工房を楽しんだ後、ヴェネツィア本島に戻ることにする。サン・マルコ広場まで行く水上バスに乗り、歩いてヴェネツィアの風景を楽しみながら駅まで戻るつもりだった。ところが、Googleマップで現在地を確認しながら乗っていたにもかかわらず、乗り過ごしてしまった。なぜかというと、サン・マルコ広場のちょっと手前がバス停だったからである。降りるべきバス停を過ぎたのに気づかず、さて次のバス停で降りようかと考えていたところ、Googleマップの現在地マークがとんでもない方向に逸れていくではないか。Googleマップのバグかな?と自分の失敗に気付かずGoogleを疑っていたのだが、ヴェネツィア本島からどんどん離れていく青い丸印に、どうやらミスを犯したのは自分の方であると認めざるを得なくなった。なすすべもなく、ジュデッカ島という離島に向かう水上バスに揺られながら、リカバリー方法を考える。まずGoogleマップをよく見てみると、水上バスの航路らしきものが表示されている。たくさんの航路があるが、それらは最終的にほとんどがサンタ・ルチア駅に向かうようだった。しかし1本だけ、広いアドリア海を渡って、フシナとかいう見知らぬ土地に向かう航路があった。つまり、この低確率のハズレを引いていなければ、サンタ・ルチア駅まで水上バスで連れて行ってくれるというわけだ。はたして、私たちは賭けに勝った。当初の思惑とは違ったが、無事に帰ることができそうである。

ホテルに戻り、夕食を食べに行くことにする。ホテルのすぐ近くのバルで、ジェノベーゼパスタとティラミスを注文する。パスタもティラミスも日本の2倍ぐらいの量があり、パンと粉チーズまで付いてくる。そう、ヨーロッパといえばこの、日本の1.5倍の値段で2倍の量が出てくる現象である。ヴェネツィアでは、日本の2.5倍の値段なのに日本人の胃袋サイズの料理しか出てこなかったので、やはりあそこはボッタクリの島だったのだ。ブラーノ島でも、フリットにパスタに鯛と、3品も食べたのに丁度いい満腹感だった。
ところで頼んだジェノベーゼパスタ、美味しかったが、日本で食べなれた、バジルが爽やかなさっぱり系の味ではなく、クリームが入ったこってり系だった。これは大変な誤算だった。満腹中枢との熾烈な戦いである。同じ値段でいいから、半分にしてほしい。私は同じものを大量に食べるのではなく、色んなものを少しずつ食べたいのだ。

皿と比較してそんなに多くないように見えるかもしれないが、皿がまず、とんでもなく巨大なのである。
なお、今日の晩ごはん、1番美味しかったのはつけあわせのパンだ。もちっとしていて、素朴な味のカンパーニュだ。パンに合わせるものとして粉チーズがついてきたが、粉チーズと合わせても美味しい。しかし、粉チーズをこぼさずにパンを口に運ぶのは大変だ。風の強い日は、口元に運ぶ前に全て吹き飛んでしまいそうだ。
食後ホテルに戻り、シャワーを浴びて旅行記を書いていたのだが、気がついたら意識が飛んでいた。
10時間ぐらい寝た気がする。
2025.9.25
昨日ブラーノ島あたりの旅行記を書きながら意識を飛ばし、朝6時くらいに目が覚めた。今日は高速鉄道Italoに乗ってフィレンツェに移動する。フィレンツェでの予定を確認していたところ、なんと明日申し込んでいたツアーがキャンセルされていることに気がついた。明日のツアーは、ピエンツァなどトスカーナ地方の小さな都市や村をいくつか回るツアーでかなり楽しみにしていたやつだ。なんということだ…。大急ぎで、別のツアーを探す。日本語ガイド付きなどという贅沢は言わない、もう何語でもいいから明日空いてるツアーはないか…と探し回り、英語とスペイン語でガイドしてくれて、モンタルチーノ、ピエンツァ、モンテプルチャーノを回り、ワインの試飲が付いてくるツアーを見つけた。最初予約していたものより良いかもしれない。無事かわりのツアーを予約し、最初のツアーのお金が帰ってきていることも確認できた。
Italoの時間は10時17分のため、ホテルでのんびりしてから駅に向かう。駅チカはやはり正義だ。
列車が出発してしばらくすると、駅員さんがチケットの確認に回ってきた。スマホでチケットの画面を見せると、駅員さんは一瞥しただけでグラッツェと言い、去っていった。アリのような字で書いてあるチケットだったのに、いったい何を確認したのだろう。それっぽい別の画面を見せてもバレない気がする。
フィレンツェのサンタ・マリア・ノヴェッラ駅には12時20分に到着。車内の案内モニターには「This train is on time」と表示されている。日本では定刻通りが当たり前で、そんな表示がされることはない。
駅からおりると、ヴェネツィアは晴れていたのにフィレンツェは大雨だ。ホテルのチェックインが13時30分からなので、駅の近くで昼ごはんを食べてからホテルに向かうことにする。昼ごはんを食べに向かったのは、Trattoria Il Contadinoというお店だ。このレストランを選んだのは、日本人がコースを頼んでも食べ切れる量であるとクチコミに書いてあったのを見かけたからである。

メニューを見ると、メイン1つ、サイド1つ、水とワインがついて1人15ユーロだ。驚くほど安い…!メインとサイドはかなり選べる種類が多く、悩んだ末、私はウサギのローストと揚げ野菜、夫はポークステーキとフライドポテトを注文した。日本ではなかなか食べることのできないウサギ肉は、ほぼ鶏肉と同じような味だった。ただし、部位によっては魚と同じぐらい小骨がたくさんある。料理の味はとても美味しい。こんなにちゃんと美味しくて15ユーロ…??と、ヴェネツィアのボッタクリ相場と比べて感動してしまう。どうやら、イタリアの中でヴェネツィアだけが特別おかしいらしい。水の都で車が入れず、細い路地や段差が多い街のため、輸送コストが高くついてしまうのが原因だそうだ。野菜の方も、皿の上に常識的な量の鮮やかなナスやパプリカのソテーが盛られている。少し油っこいが、シンプルな味付けで美味しい。かなり満腹にはなるが、完食することができる量だった。ちなみに、夫が頼んだフライドポテトは、じゃがいもが3つぐらい使われているのではないか?と思われる量だった。私がこれを頼んでいたら詰んでいた。
レストランを出て、フィレンツェで泊まるホテルB&B マルボ フローレンスへ向かう。このホテルも駅から徒歩3分ぐらいの立地である。フィレンツェは道がでこぼこの石畳で、スーツケースを引きながらの移動は想像以上に大変だ。雨も降っているので、徒歩3分が徒歩10分ぐらいに感じられる。
やっとのことでたどり着いたところ、アパートの入口にB&B マルボ フローレンスの表札がかかっており、お兄さんが立っていた。このホテルの宿泊客であることを伝えると、中に入れてくれて、親切そうなマダムがホテルのことを色々と説明してくれる。恐らく英語…なのだろうが、イタリア訛りが強くてほとんど聞き取れない。事前にホテルのホームページを見て、ひととおり注意事項を知っていたので、なんとか必要最低限理解できたという感じだ。私が何も分かっていない顔をしていると、「大丈夫よ、心配しないで」と声をかけてくれた(多分そうだと思う)ので、親切な人だと思う。

ホテルに荷物を置いて身軽になったところで、ヴェッキオ橋と、その向こう側にあるピッティ宮殿を見に行くことにする。
駅から橋に向かって進むにつれ、中世の香りが強くなっていく。淡い黄色やオレンジ色の壁にお洒落な窓が等間隔についた、4〜5階建てぐらいの華やかな建物が、石畳の両側に続いている。建物の高さはどれも同じくらい高いので、空が見える範囲がかなり狭く、日光があまり入らないため落ち着いた印象を受ける。曇り空も相まって、冬のパリを歩いている気分だ(行ったことはないが)。


店舗が多いエリア、住居が多いエリアははっきりと分かれていて、店舗エリアはかなり栄えている様子だ。雑貨、靴、鞄、本屋、アクセサリー…何でもあるし、一つ一つが洗練されたお店ばかりだ。特に靴やバッグといった革製品の店が多い。フィレンツェは革製品が確か有名だった気がする。レストランもどこもお洒落で、ワインが壁いっぱいにずらりと並べられたレストランもあり、さすがイタリアという感じがする。
フィレンツェの街は、中世ヨーロッパの雰囲気をまといつつも、受ける印象は洗練された都会だった。
ウィンドウショッピングをしながら歩いているとアルノ川に行き当たり、少し先にヴェッキオ橋がかかっているのを見つけた。橋の両側には金属細工の店舗が軒を連ね、橋の上にはヴァザーリ回廊が通っている。フィレンツェで見たかったものの一つだ。ヴェッキオ橋を渡り、川の反対側から見てみると、ヴァザーリ回廊がウフィツィ美術館に繋がっている様子が良く見えた。

橋の両側には昔肉屋が並んでいたが、ごみを川に流して悪臭問題になったので強制退去になり、かわりに宝飾の店が並ぶようになった。

ヴァザーリ回廊は、メディチ家専用通路として橋の上に造られ、メディチ家の私邸だったピッティ宮殿と、メディチ家のオフィスだったウフィツィ美術館を繋いでいる。ピッティ宮殿は、ピッティさんがメディチ家に対抗意識を燃やして建てた宮殿なのだが、ピッティさん亡き後メディチ家に買い取られ、メディチ家の宮殿になった。現在ピッティ宮殿では、メディチ家が収集していた美術品などを見ることができる。また、ボーボリ庭園というイタリア式の庭園もあり、宮殿と庭園がセットになったチケットを買うと、両方見ることができる。

宮殿で展示されているのは、絵画や彫刻が大多数で、ルネッサンスから近代にかけて製作されたものが幅広く集まっている。かなり膨大な数になるので、自分が好きな作品を探しながら見るなど、何か目的があった方が疲れないだろう。宮殿の構造は、ヴェネツィアのドゥカーレ宮殿に似ているが、ピッティ宮殿のほうが装飾の派手さが控えめで、落ち着いて住めそうだ。

ポーポリ庭園の方は、緑の中に彫刻や噴水があり、こちらも派手すぎない美しい庭園だ。かなり広いし、景色を一望できる最上部まで行こうと思うと、かなりの坂道と階段を登らなければならない。最上部にあった庭園も、シンプルで美しい庭園だった。ここまで登ってくるのはかなり大変だが、体力と時間に余裕があるなら訪れてみてもいいだろう。

ピッティ宮殿を後にし、フィレンツェ市内が一望できるというミケランジェロ広場に向かう。こちらも、かなり上まで坂道を登っていかねばならない。しかし、ミケランジェロ広場からの景色はいつまでも見ていられるぐらいで、登山する価値はあった。赤レンガの屋根で統一された街並みの中に、フィレンツェの象徴であるドゥオーモが見える。手前にはアルノ川と、ヴェッキオ橋も良く見える。フィレンツェの象徴が全て一度に見渡せる場所だ。


広場からの眺めを堪能した後、夕食を調達してホテルに戻ることにする。昼に食べたウサギ肉でまだおなかいっぱいのため、レストランの食事量はちょっと辛い。まずは、SAPORI & DINTORNI STOREというヴェッキオ橋の近くのスーパーに寄る。ピザやサンドイッチ、パン、お惣菜の品揃えがいいスーパーだ。もちろん生ハムとチーズは、パック詰めされたものも塊のものも大量に用意されている。お惣菜がなかなか美味しそうだったので、私は生ハムとセミドライトマトのサンドイッチと、小さなイカとグリーンピースのトマト煮込みを買うことにした。牛みたいに4つ胃袋があればもっと色々試せたのだが、残念ながら私には1つしか胃袋がない。夫はピザを買っていた。ついでに水と、スタバのコーヒーが売られていたので、カプチーノを購入した。イタリアご当地のコーヒーにしたいところだが、カップ飲料はスタバしかなく、あとはお湯が必要なものばかりだったのだ。

ホテルに戻る途中、パン屋にも寄ってみる。明日予約したツアーの集合時間が早く、ホテルの朝食を食べられないので、朝ごはん用に何か買っていくことにする。イタリアのパン屋は、パンの一つ一つがでかいし、タルトやケーキ寄りの甘いパンが多い。ピザはある。立ち寄ったのが夕方だったというのもあるかもしれないが、ちょうどいいサイズのちょうどいい食事パンを探すのに苦労した。妥協して小さなクロワッサンらしきものを買おうとしたが、店主にジェスチャーで「それは硬いよ、クロワッサンはこっちだよ」という意味のことを言われたのでやめた。クロワッサンは残り1個だったので、夫はピザを買っていた。夫の食事が今晩と翌朝続けてピザになるので、ピザとクロワッサンの交換を提案したが、ピザが良いらしかった。
ホテルに戻り、買ったものをたべてみると、サンドイッチもお惣菜もかなり美味しかった。コスパを考えると今までで最強かもしれない。サンドイッチは、生ハムの塩気とマヨネーズの油、セミドライトマトの酸味のバランスがちょうどよく、パンも何かの穀物が混ざっているのか、香ばしくて美味しい。日本のスーパーのサンドイッチを全部これにしてほしいくらいである。お惣菜は、超美味しい魚介のトマトソースパスタのソースの部分を食べているようで、イカの旨味が詰まっている。レストランといい、スーパーといい、ヴェネツィアとちがってフィレンツェは常識的な値段でちゃんと美味しいものを出してくれる街だった。


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